考えられる疾患
1.肛門・直腸疾患
(排便時の痛み・鮮血便)

- 痔核(いぼ痔)(排便時に鮮血、痛みなし~軽度、トイレットペーパーに血が付く)
- 裂肛(切れ痔)(排便時に強い痛み、少量の鮮血)
- 肛門周囲膿瘍・痔瘻(発熱、膿、持続する痛み)
2.大腸疾患
(血便+腹痛・下痢)

- 大腸がん(便が細くなる、体重減少、貧血、慢性的な血便)
- 大腸ポリープ(通常無症状、大きくなると出血)
- 虚血性腸炎(突然の左下腹部痛、鮮血便、高齢者に多い)
- 炎症性腸疾患(IBD)
→潰瘍性大腸炎(慢性の粘血便、下痢、発熱)
→クローン病(慢性の下痢、体重減少、肛門病変) - 感染性腸炎(細菌性赤痢、アメーバ赤痢)(発熱、粘血便、腹痛)
3.上部消化管出血
(黒色便・タール便)

- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍(心窩部痛、黒色便、吐血)
- 胃がん(貧血、体重減少、食欲低下)
- 食道静脈瘤破裂(肝硬変関連)(大量の吐血、黒色便)
鑑別のポイント
☑便の色と出血部位
黒色便(タール便)
上部消化管出血(胃・十二指腸・食道)
暗赤色便(赤黒い血)
小腸・右側大腸の出血
鮮血便(赤い血)
下部消化管(S状結腸・直腸・肛門)
☑随伴症状の確認
排便時の痛み+鮮血
- 痔核・裂肛
下痢・粘血便・発熱
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
突然の血便+左下腹部痛
- 虚血性腸炎(高齢者に多い)
慢性的な便秘+血便
- 大腸ポリープ、大腸がん
体重減少・貧血・便が細い
- 大腸がんの可能性
☑出血の頻度と量
一度きりの少量の血便
痔核、裂肛
持続的な出血、便が細くなる
大腸がんの可能性
大量の血便+ショック症状
大腸憩室出血、消化管出血(緊急対応)
必要な検査
腹部CT・MRI
腸の虚血や腫瘍の評価
便培養検査
細菌性腸炎(赤痢、アメーバ赤痢)の確認
血液検査(貧血、炎症マーカー、腫瘍マーカー)
- 慢性出血や炎症性疾患の評価
まとめ
- 鮮血便は痔が多いが、大腸がんや炎症性腸疾患の可能性も考慮する
- 黒色便(タール便)の場合は上部消化管出血を疑い、胃カメラが必要
- 粘血便や慢性下痢がある場合は、炎症性腸疾患(IBD)を疑い、大腸内視鏡を推奨
- 体重減少や貧血がある場合、大腸がんのリスクが高く、精密検査が必要!
- 急激な大量の出血や血圧低下がある場合は、緊急受診が必要!
▶ 肛門からの出血がある場合、特に中高年は大腸内視鏡検査を受けることが重要!