胃がんとは?
胃がんは、胃の壁の一番内側の粘膜から発生するがんです。胃がんのほとんどは「腺がん」と呼ばれるがんであり、腺がんは、細胞と組織の構造的特徴から、分化型と未分化型に大別されます。胃がんは、大きくなるにつれて、徐々に胃の壁の外側に深く浸潤していきます。がんがより深く浸潤するにつれ、リンパ節や他臓器に転移するリスクが高まり、胃の外側にある大腸や膵臓、腹膜にも直接広がっていくことがあります(転移・直接浸潤・播種)。
胃がんの好発年齢は?
胃がんの好発年齢は、一般的に50歳以上で、特に60歳から70歳代にかけての高齢者に多く見られます。しかし、それより若い年代で発症することもあります。男性の方が女性よりも罹患率が高いとされています。年齢だけでなく、遺伝的要因、食生活、生活習慣、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染状況など、多くの要因が胃がんの発症リスクに関係しています。定期的な健康診断や早期発見のための健診を受けることが大切です。
胃がんとヘリコバクター・ピロリ感染症の関係は?
胃がんの主な発生要因は、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染です。
ヘリコバクター・ピロリ菌(通常「ピロリ菌」と呼ばれる)と胃がんとの関係は、多くの研究によって示されています。以下はその関係についての概要です:
胃炎の原因
ピロリ菌は、感染すると胃の内壁に炎症を引き起こすことが知られています。この炎症は、長期間持続すると慢性的な胃炎を引き起こし、これが胃がんのリスクを増加させる原因の一つとされています。
がんのリスク増加
長期的なピロリ菌感染は、胃の内壁の細胞に変化を引き起こし、これが胃がんの初期段階へと進展する可能性があります。具体的には、慢性的な炎症の結果、胃の内壁の細胞が異常に成長し、最終的にがん細胞に変わると考えられています。
除菌治療の重要性
ピロリ菌の感染が胃がんのリスク因子であることが明らかになってから、感染者に対する除菌治療が推奨されるようになりました。除菌治療は、特定の抗生物質を組み合わせて使用し、ピロリ菌を胃から除去するものです。研究によれば、ピロリ菌の除菌治療は胃がんのリスクを低下させる効果があると報告されています。
全ての感染者が胃がんを発症するわけではない
しかし、ピロリ菌に感染しているすべての人が胃がんを発症するわけではありません。他の要因(遺伝、食生活、環境など)との相互作用が、胃がんの発症リスクに影響を及ぼすと考えられています。
総合的に、ピロリ菌の感染は胃がんのリスクを増加させる重要な因子であり、感染の早期発見と適切な治療が胃がんの予防に役立つとされています。
胃がんの治療法は?
胃がんのステージによって治療の方針は異なります。以下は一般的な胃がんのステージ別の治療方針の概要です。
ステージ0 (早期胃がん)
主に内視鏡的手術を用いて腫瘍を取り除きます。このステージでは、腫瘍は胃の内側の層にのみ存在するため、治療の成功率は非常に高いです。
ステージI
手術 (部分的または全胃切除) が主な治療方法です。腫瘍の位置や大きさに応じて適切な手術方法が選択されます。
一部の場合には、手術前後の化学療法や放射線治療が行われることもあります。
ステージII
手術による胃の切除が基本的な治療となります。
手術前後に化学療法や放射線治療を併用することも一般的です。
ステージIII
手術が行われることもありますが、このステージではがんが胃の外側の組織やリンパ節にも広がっているため、手術の前後に化学療法や放射線治療を併用するのが一般的です。進行が特に激しい場合や、手術が困難な場合は化学療法や放射線治療のみを行うこともあります。
ステージIV
このステージでは、がんが遠隔の臓器に転移していることが多いです。
化学療法、標的治療薬、または免疫療法が主な治療となります。これらの治療は、がんの進行を遅らせる、または症状を軽減することを目的としています。
緩和治療も重要で、痛みや食欲不振などの症状の管理や患者の生活の質の向上を目指します。
最終的な治療選択は、診断時のがんのステージ、患者の健康状態、リスク・利益バランスなどの多くの要因に基づいて行われます。