肛門外科
肛門外科では、痔(いぼ痔・切れ痔・痔ろう)をはじめ、肛門周囲膿瘍や直腸脱などの肛門疾患の診断・治療を行います。排便時の痛みや出血、腫れ、かゆみなどの症状がある方は、お早めにご相談ください。内服薬や軟膏による保存的治療のほか、症状に応じた日帰り手術や専門的な治療も提供します。また、便秘や下痢などの排便習慣の改善指導も行い、症状の再発予防にも努めています。恥ずかしさから受診をためらう方も多いですが、早期治療が重要です。安心して相談できる環境を整えていますので、お気軽にご来院ください。
いぼ痔に対する日帰り手術
いぼ痔に対する外科的治療には様々ありますが、もっとも代表的なものは、結紮切除術です。これは痔核を切除するもので最も根治性が高くなりますが、侵襲が大きく、多くの場合入院(約5-7日程度)が必要になります。一方、痔核を切除せず、薬を注入し痔核を退縮させる治療があります。この治療は切除に比べ低侵襲で術後出血の危険も少ないため、日帰り手術で行えるという利点があります。
肛門疾患に多く見られる症状
肛門の出っ張り
痔核(いぼ痔)、肛門ポリープ・直腸粘膜脱、肛門周囲膿瘍・痔瘻(じろう)、肛門周囲の皮膚疾患、直腸脱(肛門から腸が出てくる状態)などが疑われます。肛門診察・直腸指診、肛門鏡検査、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)、血液検査(感染症マーカー)、組織生検(必要時)などにより診断をくだします。
肛門からの出血
肛門・直腸疾患(排便時の痛み・鮮血便)、大腸疾患(血便+腹痛・下痢)、上部消化管出血(黒色便・タール便)などが疑われます。大腸内視鏡検査(大腸カメラ)、胃カメラ(上部消化管内視鏡)、腹部CT・MRI、便培養検査、血液検査(貧血、炎症マーカー、腫瘍マーカー)などにより診断をくだします。
肛門の痛み
肛門の炎症・傷による痛み、腫瘍・感染症、直腸・肛門の機能異常などが疑われます。肛門診察・直腸指診、肛門鏡検査、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)、腹部・骨盤CT、病理検査(組織生検)などにより診断をくだします。
肛門のかゆみ
肛門の炎症・刺激、感染症、消化管疾患、全身疾患・アレルギーなどが疑われます。肛門診察・直腸指診、皮膚検査(真菌培養、アレルギーテスト)、便検査(蟯虫卵検査、便培養)、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)、血液検査(糖尿病、肝機能、アレルギー検査)などにより診断をくだします。
肛門の主な病気
痔核(いぼ痔)
痔核(いぼ痔)とは、肛門周辺の血流が滞って血管がつまってこぶ状の腫れが起こる病気です。形状がイボに似ていることからいぼ痔と呼ばれ、直腸と肛門の間にある歯状線を境に内側にできるものを内痔核、外側にできるものを外痔核といいます。
痔核(いぼ痔)は強くいきんだりすることで血管がうっ血して発症しやすくなり、排便時に血がポタポタたれたり勢いよく出血することがあります。
内痔核と外痔核で症状や治療法が異なります。
内痔核

内痔核は肛門の内側に位置するため、初期段階では外からは見えにくく、痛みを伴わないことが多いです。これは、肛門内部には痛みを感じる神経が少ないためです。しかし、内痔核が大きくなると、排便時に肛門から出血したり、重度の場合は肛門外に脱出(脱肛)したりすることがあります。脱出した内痔核は痛みを引き起こすことがあり、特に排便後に自然に戻らない場合は手で押し戻さなければならないこともあります。
内痔核の原因には、長期間の便秘や下痢、排便時の過度ないきみ、妊娠中の圧迫、座りっぱなしの生活様式、高齢による組織の弱化などがあります。これらの状態は肛門内の圧力を高め、痔静脈叢に負担をかけて血液の流れを悪化させ、結果的に痔核を形成します。
内痔核の治療は、症状の程度と患者の全体的な健康状態によって異なります。軽度の場合は、食生活の改善、十分な水分摂取、繊維質の多い食品の摂取、適切な排便習慣の確立など、ライフスタイルの調整で改善されることがあります。また、局所的なクリームや坐薬を使用して症状を和らげることもできます。より重度の場合には、スクレロセラピー(硬化療法)、場合によっては外科的手術が必要になることがあります。
外痔核
外痔核は、肛門の周囲にできる、痛みを伴う腫れや突起のことを指します。通常、これらは肛門の外側にあり、内痔核とは異なり、直接見たり触れたりすることができます。外痔核は、肛門の静脈が拡張し、時には血液で満たされることによって形成されます。これはしばしば便秘、長時間の座位、妊娠、出産、または遺伝的な要因などによって引き起こされることがあります。
切れ痔(裂孔)
切れ痔、医学的には「裂肛(れっこう)」と呼ばれ、肛門の出口付近の皮膚が切れてしまう状態です。便秘や下痢などによって硬い便や水っぽい便が肛門を通過する際に、肛門の皮膚が傷つき、裂けてしまうことで起こります。
痔ろう(穴痔)
痔ろう(じろう、または肛門瘻、Anal Fistula)は、肛門周囲の皮膚と肛門管内部の間に異常な通路が形成される状態を指します。この異常な通路は、通常、内部の感染が原因で形成されます。感染が肛門腺から始まり、その周囲の組織に膿を作り出すと、その膿が外部へ排出するための通路を作ります。
痔ろうは痛み、不快感、腫れ、そして肛門周辺の皮膚からの膿または血の排出などの症状を引き起こすことがあります。また、肛門周辺のかゆみや、排便時の痛みを伴うこともあります。
肛門周囲皮膚炎
肛門周囲膿瘍は、肛門近くの組織内に蓄積した膿による感染です。これは、肛門内部の小さな腺が塞がれ、感染することで発生します。この腺の閉塞は、便通の際に生じる微小な損傷から生じることが多いです。膿瘍は強い痛み、腫れ、赤み、そして時には熱を伴います。