大腸内視鏡検査、腺腫発見率(ADR)が高いほど後のがんリスク低下
2025.03.12
背景
便潜血免疫化学検査(FIT)を基盤とする大腸がん(CRC)スクリーニングプログラムは、集団ベースの介入における標準的な手法である。その有効性は、FIT陽性後の大腸内視鏡検査での腫瘍の検出に依存するが、検査の質を示す指標である腺腫発見率(ADR)が、検査後のCRC(PCCRC)発生リスクに与える影響は十分に検討されていない。
目的
FIT陽性者を対象としたスクリーニングプログラムにおいて、ADRとPCCRC発生リスクの関連を調査する。
研究デザイン
- 対象: 2003年~2021年にイタリア北東部で実施されたFITスクリーニングプログラムの受診者
- 研究方法: 後ろ向きの集団ベースコホート研究
- 患者: FIT陽性後に大腸内視鏡検査を受けた全患者
測定項目
地域のがん登録データを利用し、大腸内視鏡検査の6か月後から10年間のPCCRC発生を追跡。内視鏡医のADRを以下の5群に分類(20~39.9%、40~44.9%、45~49.9%、50~54.9%、55~70%)。Cox回帰モデルを用い、ADRとPCCRC発生率の関連をハザード比(HR)で評価。
結果
- 対象患者数: 初回コロノスコピー110,109件のうち、2012~2017年の49,626件(113人の内視鏡医による)を分析。
- 追跡期間: 328,778人年のフォローアップで277例のPCCRCを確認。
- ADRの平均値: 48.3%(範囲23%~70%)。
- PCCRCの発生率(10,000人年あたり)
- ADRが最も低い群(20~39.9%): 13.13件
- ADR 40~44.9%: 10.61件
- ADR 45~49.9%: 7.60件
- ADR 50~54.9%: 6.01件
- ADRが最も高い群(55~70%): 5.78件
- ADRとPCCRC発生率には逆相関があり、最も低いADR群では、最も高いADR群に比べてPCCRCリスクが2.35倍増加(HR 2.35, 95% CI 1.63-3.38)。
- ADRが1%向上するごとにPCCRCリスクは4%低下(HR 0.96, 95% CI 0.95-0.98)。
制限事項
ADRはFIT陽性基準値の設定によって影響を受ける可能性があり、異なる環境では数値が異なる可能性がある。
結論
FITスクリーニングプログラムにおいて、ADRが高いほどPCCRCリスクが低下することが示された。適切な大腸内視鏡検査の質を維持することが、スクリーニングの有効性を高める上で重要であり、内視鏡医のADR向上がPCCRCリスクの低減に寄与する可能性がある。